　前泊したのでホテルから第２ターミナルまでは１５分。いつの間にかオートチェックインなるサービスができていて、すでにチェックインは終わっているし、荷物は「手ぶらサービス」で到着地のパリまでノータッチだ。「国際線は２時間前」という過去の認識が見事に覆され、１時間前に着いていればラウンジで時間がつぶせるという状況になっている。もはや国内線感覚だ。しかし、通信サービスの料金を節約するため、今回も無線ルータを予約していたので、まずはそれを受け取りに行かなければならない。また、防犯のため「現金は現地でキャッシング」と決めているが、両替のカウンターにまったく列ができていなかったので、暇つぶしに当座の分を両替しておくことにした。１５０ユーロと５００ノルウェークローネ。あとはラウンジで搭乗を待つばかりだ。
　定刻に成田を出発。オフシーズンのためか、パリ行きだというのに空席もある。運よく私の隣は空席だった。これならエコノミーでも十分リラックスできる。
　機内食は十分おいしかった。また、デザートにハーゲンダッツのアイスが出てきた。何となく初めての印象。たったアイスひとつで中年のおやじが満足した。
　機内で唯一気になったのが、隣の空席をはさんで隣の若い女性。ドリンクを毎回ふたつずつ注文し、さらにコールボタンでＣＡを呼んでまでおかわりしていた。それは別にはしたないとは思わないが、そのくせしょっちゅうトイレに立つのだ。多分毎時間くらいの頻度。ただそれだけのことなのだが、品があるようには感じられなかった。せっかく美人なのに。席の位置が逆でなくて良かった。
　定刻よりも少し早くパリに着いた。２度目のシャルルドゴール空港。いつものようにあっけなく入国審査をパスして、今回はＲＥＲでパリへ向かう。
　到着したターミナル１からＲＥＲに乗るためには、ターミナル間を結ぶ無料の電車に乗ってターミナル３へ行く必要がある。ＲＥＲで移動する人が少ないのか、駅も列車もガラガラ。しかし、２年ぶりの海外で緊張していたので、もしも混雑していたら切符を買うのにも苦労しただろう。折角日本で両替してきたのに、自動券売機はコインしか受け付けないものだった。仕方なくカードで購入。
　ところで、今回は妙な計画を思いついていた。ガイドブックに「ＲＥＲは怪しい」というような評価が書いてあったので、最後までＲＥＲで行くかバスを利用するか迷っていた。料金や速さを考えればＲＥＲ。しかし、慣れない異国の地でいきなりリスクをとる勇気もない。そこで浮かんだのがスーツケースを預ける作戦。大きな荷物さえなくなれば、身軽になってその分気が楽になるし、ひょっとすると旅行者としての雰囲気を和らげ、防犯効果が期待できるかもしれないと思ったのだ。荷物を預けられる方法を事前に調べまくっておいた。シャルルドゴール空港にも預けられる施設があるようだが、パリから離れていてアクセスがよくないし、なぜかとんでもなく料金が高い。結局、パリ北駅のロッカーを利用することにした。計画では、初日の今日と最終日の日曜に空港とパリ北駅を往復するときだけスーツケースを携帯することになる。運よく、空港からの最初の駅で高校生風の集団がＲＥＲに乗車してきた。だから安全とは限らないが、何となく落ち着くことができた。
　問題はパリ北駅。ちょうど通勤のラッシュに当たったようで、実に人が多い。「何のために駅にいるの？」という感じに見える人もたくさんうろついている。「ＲＥＲは怪しい」というのは、こういう状況を言うのかもしれない。ともかく一刻も早く荷物を預けたいという衝動にかられた。幸い、すぐにロッカーを見つけられた。警備員がいるし、まるで警察署のように金網で囲われている。ここならある程度安心して預けられると思った。
　スーツケースを預けたら、期待以上に気が楽になった。これで荷物はナップサックのみ。携帯電話とルータ、iPad、それらの充電器、１回分の着替えしか入っていない。あとはホテルへ向かうだけ。ＲＥＲと地下鉄を乗り継いでベルシーへ。初日は、１０年前に連泊したベルシーのホテルを予約しておいた。すでに日が落ちて辺りは真っ暗だったが、実に懐かしいと思った。ただ、ホテルは内装を改装したようで、部屋はもちろんフロントまですっかり様変わりしていて、少しだけがっかりした。当然のこととはいえ、予約が通っていて安心した。