さて、いよいよ最終日となった。昨日は朝から快調で、「あれっ？昨日までの疲れはどうしたのかな？」と不思議な気がしていた。ところが、その反動なのか、なぜか今朝は異様に不調だった。ホテルをチェックアウトしなければならないので、身支度の後荷造りを始めたのだが、すぐに息が上がってしまう。「ひょっとして熱でもあるのか？」と思わせるほどだった。
　今日は、当初初日に予定していたベルサイユ宮殿が目的だ。本当は、帰りの飛行機に遅れないよう、遠出を避けてルーブルを見学する日だった。結果的には、今日はルーブルの休館日だったので、結果オーライなのだが、これほど体調が悪くてベルサイユまで行けるだろうか？と思いながら作業を続けた。

　ホテルをチェックアウト後、とりあえず郵便局へ行った。モンマルトルで買ったきれいな絵葉書を日本へ送るためだ。姪が喜んでくれるに違いない。重い足取りでも、これだけは欠かせない。
　ところで、どうして体調が急変したのだろうか？そればかりを考えていた。単に疲れがたまったからなのか？それとも栄養不足か？（やや偏った食事が続いたかもしれない）かぜならば、計画の変更も検討しなければならない。今夜には１２時間の飛行機が待っているからだ。
　結局、万一を考慮して、ベルサイユ行きはあきらめることにした。運命的なことを言うつもりはないが、ベルサイユには縁がなかったのかもしれない。ベルサイユ宮殿も世界遺産で、フランスを代表する超有名スポットだから、ぜひ行きたかったのだが仕方がない。そこで、予定外でオルセー美術館へ行くことにした。

　ところが、このオルセーが思わぬ伏兵だった。研究不足と言えばそれまでだが、この美術館にはルーブルに優るとも劣らぬ美術品があるではないか。
　メトロを降りて、最初に驚いたのが長蛇の列だった。ルーブル休館の影響もあるだろうが、チケットを買うまでに１時間は並んだだろうか。いやはや、こんなスポットを見落としていたとは・・・。
　ガイドブックに時間がないときの見学方法が指南してあったので、とりあえずそれに従い、印象派の絵画から見学した。マネ、ルノアール、ゴッホ、セザンヌなど、美術には縁の少なかった私ですら知っている画家たちの作品がそこにはあった。体調の悪さを忘れてしまうほどだった。

　チェックアウトが遅れたことと、長い列に並んだこともあって、ちょうどここでお昼になった。一服して、集合時間までの計画を練らなければならない。歩き回るのを避けるために、オルセー館内のレストランを選んだ。少々高価でもやむを得なかった。また、ひょっとするとさらにここで見学を続けるかもしれないのだ。
　とりあえず案内された席について、注文を決め、ふっと周りを見渡してやっと気付いた。何と、このレストランさえも美術品のようだったのだ。ひょうたんからこまとはこのことだ。恐るべしオルセー美術館。

　ギャルソンのサービスには感服したが、食事自体はそれなりだった（とは言っても、１５ユーロの定食では期待する方が無理か）。待ち時間なしで入ったものの、その後満席になって、いつの間にか列ができていた。おかげで、食事が運ばれるのに時間がかかって、期待以上に長時間休むことができた。少し元気が戻ったし、他にもまだすばらしい作品があることが分かったので、もうしばらく見学することにした。
　０階（日本でいう１階）には、クールベ、コロー、ドラクロワ、ミレーなどの作品が展示してあった。教科書で見た絵画が一同に会しているという具合だ。後で分かったのだが、このオルセーとルーブルの美術品は、年代が重ならないようになっているらしい。つまり、古代から中世がルーブルに、近世がオルセーに、現代は国立近代美術館に保管されているのだ。ルーブルには学生さんが目立ったが、このオルセーには子供たちが先生と勉強に来ている光景が見られた。

　帰りのシャルルドゴール空港では、ダイナースのカードで利用できるラウンジがなく、ともかく搭乗までの時間つぶしが大変だった。相変わらず体調は戻らないし、飛行機は本当に大丈夫だろうか？と心配だった。
　したがって、飛行機の中では休息のことしか頭になかった。折角の旅行が台無しだ。予定の変更も余儀なくされたし、原因が知りたかった。

　ところが、不思議なことに、成田に着いたらかなり復調していたのだ。もちろん完全な休息体制も功を奏したのだろうが、機内では熟睡は難しいはずだし、睡眠時間も十分とは言えないものだ。むしろ、長時間の飛行で一層疲れる方向に働くはずなのに、なぜ復調したのだろうか？
　結論は、栄養失調だと思う。何か、ビタミンかミネラルが危機的に不足していたのだろうと思う。４月５日に一時的に体調が回復したのも、前日の夕食にタルタルステーキをお腹いっぱい食べたからだとしたら、この推測を支持できる。
　当然、旅行中粗食に甘んじていたわけではないが、食べたいものが食べられないということが重要な意味を持つ可能性は十分に考えられる。心身ともに衰弱が激しい海外旅行では、十分な栄養管理が必要なのかもしれない。

　ともあれ、翌７日、無事成田に着いた。念のため空港のラウンジで休憩し、予約しておいた成田エクスプレスで帰路に着いた。自宅まではさらに３時間近くの行程だったが、やはり体調は大丈夫だった。帰国後最初の食事は、からだの欲するものを選んだ。（中華料理）

次回の海外旅行のための教訓

１．現地食にこだわらず、食べたいものを食べる。
２．いざというときのために、ビタミン剤等を持参する。
３．自分撮影用に三脚を持参する。
４．アマチュア無線はローバンドで運用する。（無理ならあきらめる。）