イタリア旅行（２）
平成２３年９月２３日
この日は日帰りでヴェローナに行く予定にしていた。いつもなら決まってレンタカーを借りるところだが、今回は唯一の例外となった。丸１日を割くほどでもないと思って、旅行社に遅めの列車をとってもらっていたので、出発まで少し時間があった。
そこで、昨日スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコ（大信者会）だと思って別の教会を見ていたことに気づいたので、もう一度行き直すことにした。リアルト橋の乗り場からバポレットに乗ってサン・トーマへ。
ところが、まだ朝早すぎて開いていなかった。他になすすべもなかったので、３０分くらい道端に座ってただ水路を眺めていた。
道端に座るというと日本では奇妙な感じがすると思うが、ここベネチアではごく自然なことだった。世界中から大挙して押し寄せてくるというのに、カフェなどの店舗以外に観光者が休憩できるようなイス等がまったく準備されていない。そのため、皆階段や道端に平気で座っているのだ。日本人の感覚から言えば、そうした光景はあまり上品なものではなかった。
ただ、ちょっとした後ろめたさに打ち勝って座っていると、水路を行く小船の様子や、街で生活している人たちの声に触れることができ、瓢箪から駒のようにかえって貴重な時間になった。逆に、時間待ちまでして見たスクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコ（大信者会）は、「なるほど」という程度で、それほど感慨深いものではなかった。（ここに限らず、写真撮影禁止という方針が納得できない）
写真左：街中のありふれた光景③民家：スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコの待ち時間に眺めていた。
写真右：水面に写る民家：民家が反射して分かりにくいが、水路の水は意外にきれいだった。
予約した列車は１０時５０分発というのに、１０時には駅に着いてしまった。ガイドブックには直前にホームが変わったりするので注意せよと書いてあり（これはドイツ等でも同じ）、駅に着いたらまず掲示板を見るのだが、早すぎてホームの番号表示がされていなかった（決まっていないということ？）。ひたすら人間ウオッチングで時間をつぶす。
ヨーロッパの鉄道は今回が初めてではない。フランクフルトとフランスのストラスブールを往復した経験がある。日本の鉄道と決定的に違うのは、ホームが低く、列車の出入り口と同じくらいの高さにはなっていないことと、発車の合図がないこと、定刻運行が守られないことだ。この日も、１時間１０分の行程で１０分くらい遅れた。
良かったこともある。２等だったにもかかわらず、座席に電気コンセントが設置されていた。日本では、これほどノートパソコンや携帯電話が普及しているのに、新幹線ののぞみくらいしか同様のサービスは行われていないと思う。ＪＲ各社にはぜひ見習ってもらいたい。
写真左上/サンタ・ルチア駅構内：改札がない点は日本と決定的に違うが、それ以外には大きな差はなかった。
写真右上/ヴェローナ行きの列車：デザインにはそれほどこだわりが感じられない。
写真左下/列車の中の様子：日本の列車と大差ない。電気コンセントが装備されていることには感心した。
写真左下/ヴェローナのブラ広場：右に見えるのが市庁舎。奥はアレーナ。
ヴェローナはロミオとジュリエットで有名な街だ。中学生のときに見た映画が印象的で忘れられない。シェークスピアに興味を持ち、古語英語を勉強したくらいだ。Wherefore art thou Romeo?(=Why are you Romeo?)は今でも忘れていない。
ガイドブックにしたがって、とりあえずヴェローナカードを購入したかった。ところが、どこにもそのような案内がみつからない。何とも不親切な街だ。仕方がないのでインフォメーションで聞くことにした。するとタバコ屋で売っているとのこと。ようやく見つけたヴェローナカードだが、ベネチア空港からのバス同様、またしてもガイドブックの説明と違っていた。１日券が１０ユーロのはずだったのに、１日券はないとのこと。結局２日券を１５ユーロで買うことになった。このカードがあると、交通機関が無料になる他、主な観光スポットがすべてフリーパスになる。
駅前のバスターミナルからバスでブラ広場へ。ここには市庁舎とアレーナがある。アレーナは競技場のこと。ローマのコロッセオの小さい版というところだ。このアレーナ、単なる観光スポットしてだけではなく、実際に多目的に使われているようだ。この日もミュージカルが予定されていて、そのため１５時半にチケットの販売を終了するという張り紙があった。折角来たのに入れないということもあると思うが、それに当たらずに幸運だった。
アレーナを観覧した後、お昼の時間帯だったのでレストランを探した。結構暑いが湿度が低い感じで、日陰に入ると非常に心地良い。それだけに、やはりテラス席を利用したい。しかし、なかなかひとりで席を取るのが気恥ずかしいのだ。それでも何とか席に座って、イタリアに来て初めてピザを頼んだ。
写真左上/アレーナの観覧席部分：驚いたのは、今でも演劇やコンサート等に実際に使っていることだった。
写真右上/アレーナの内部：補強や改修をしているのだろうが、現代でも朽ちないとはすごい。
写真左下/ブラ広場のカフェ：ひとりで席をとるのは照れくさいが、比較的空いているところを探してようやく着席した。
写真左下/ランチに頼んだピザなど：イタリアに来て初めて食べたピザだった。暑くてミネラルウォーターは不可欠だった。
昼食後、歩いてエルベ広場へ向かった。この近くにジュリエッタの家がある。要するにジュリエットの家だ。恋愛にまつわるものだから、さすがに若い女性がたくさん集まっていた。中年おやじがひとりで近寄るのは恥ずかしいほどだ。それでも、有料の建物内部には興味がないのか、ほとんど誰もいなかった。実際に映画で使われたベッドや衣装が展示されていて、じっくり観察できた。
ランベルティの塔にも登ってみた。ヴェローナカードがあれば無料なのだが、１ユーロ払うとエレベーターが使えると説明された。体力の衰えたおやじは迷わずエレベーターを選択。パンフレットによれば、２４３段の階段分をショートカットできる。さらに４６段階段を上った展望台からの景色はすばらしかった。
帰りの列車は１６時２９分なので、１６時までに駅へ戻れば十分だ。しかし、歩きにつぐ歩きと連日の暑さにバテていて、これ以上の観光は気が進まなかった。
来た道を戻ることはまったく考えなかったので、とりあえず大通りを目指して歩いた。大通りにさえ出れば、バスに乗れると思ったのだ。実際バスが走っている通りにたどり着いたのだが、自分がどこにいるのかが分からないので、どの方角へどのバスに乗れば良いのかが分からない。いつものように人に聞く手もあったが、ふと思いついたのが太陽の位置だ。時刻と太陽の方角が分かれば、おおよその方位が分かる。その直後、往きに乗った路線番号のバスが来たので、多少不安なまま乗ってしまった。幸い時間には余裕があるので、仮に間違っていても十分復旧可能だ。しばらく走ると見覚えのある場所へ。アレーナのあるブラ広場だった。バスの向かう方向が駅方面であることも確実だった。
ロミオとジュリエットで実際に使われたバルコニー：オリビア・ハッセーが出演した映画ではなさそう。
写真左：ジュリエッタの家のベッドルーム。写真右：映画で使われた衣装。
ランベルティの塔：エルベ広場からの光景。塔に登るためには反対側へ入らなければならない。
写真左：ランベルティの塔から見えるヴェローナの景色。写真右：何気なく置かれているフィアットにイタリアを実感した。
ベネチアに戻るとそろそろ夕食の時間だった。他にあてもないのでホテルのレストランへ。ベネチアは魚介類がおいしいということなので、魚料理を選ぶことにした。ところが、そこそこ自信のある英語なのに、メニューに書いてあるcuttlefishが分からなかった。何だろうと思いながら頼んでみたら、魚ではなくイカが出てきてしまった。そう、イカのことだったのだ。イカは大好きなのだが、まさかイカだと思わなかったので、自分の英語力を恨みながらあきらめて食べた。ちなみに、cuttlefishよりも、ベネチア風というメニューの記述に惹かれたのだ。しかし、そのベネチア風はただのイカ墨仕立てだった。
