イタリア旅行（３）
平成２３年９月２４日
写真左/ローマ行き特急：昨日の列車よりは特急らしい？。写真左/駅の売店で買った朝食：フルーツは万国共通だ。
早くもベネチアを発つ日が来た。今日は再び鉄道でローマに向かう。サンタ・ルチア駅は昨日使ったので、もう不安材料はない。ローマのコロンナ宮の閉館時刻に間に合うよう、朝早い列車を予約してもらっているのだが、日本との時差の関係で早寝早起きが定着していたから、寝坊の心配もほとんどなかった。
ホテルのフロントでチェックアウトを申し出ると、手続きの後、朝食をとるように勧められた。しかし、列車の時間を告げると、それでは仕方がないですねということに収まった。
７２時間券を買って利用したバポレットもこれが最後になる。学校へ登校する子供たちと一緒になった。後になってじわっと実感できる、そういう街だったと思う。
前述したように、ローマへはやや急ぐ行程だった。予定では１２時１３分にローマに着く列車なので、コロンナ宮の閉館時間である１３時１５分まで１時間あり、十分に間に合うスケジュールだ。しかし、予断は許さない。
悪い予感が的中して、列車は少し遅れて出発した。途中、パドバでは１０分の遅れ。フィレンツェはまだ全体の半分も来ていないのに、時間だけはすでに半分以上経過していた。一体いつローマに着くのだろうと不安でいっぱいだった。
理論上は、フィレンツェから相当な勢いでぶっ飛ばさないと定刻に着くことはできない。百歩譲ってパドバでの１０分遅れを許容しても、これまでのような走り方ではさらなる遅れが予想されると思った。ところが、フィレンツェを出発してしばらくしたら、何と列車は相当な勢いでぶっ飛ばし始めたのだ。いわゆる取り越し苦労というやつだ。結局、列車はほぼ定刻にローマに着いた。パドバでの１０分遅れも挽回したことになる。あっぱれだった。
コロンナ宮の閉館時間までは１時間あるが、それまでにすべきことがいくつかあった。まずはスーツケースを預けること。大荷物を抱えたままでは不自由だし、盗難リスクも高くなる。しかし、不運にもテルミニ駅の手荷物預かり所は混んでいて、１５分もかかってしまった。次にローマパスを買うこと。これは、ヴェローナでのヴェローナカード同様、観光と交通機関の統合チケットで、コロンナ宮への移動に早速使いたいという魂胆だったのだ。ところが、あてにしていた新聞屋さんでは売り切れとのこと。その後どこへ行ってもないと言う。結局、売り切れではなく、販売していなかたのだ。yetと言われてようやく気づいた。この間さまようこと１０分くらい。「１時間ある」という余裕が、執拗に探し続けるという行為に走らせてしまった。
この時点で閉館まであと３０分。ローマパスの代わりに地下鉄・バス共通の３日券を買い、急いで地下鉄へ。ところが、Ａ線、Ｂ線の区別、それぞれの上下線の方向がとっさに分からない。ここで間違ったらアウトだと実感し、深呼吸して冷静に判断することにした。
今から思えば、Ｂ線でコロッセオまで行ってしまった方が、その後の経路はずっと分かりやすかった。ところが、なるべく無駄がないようにと手前のカブール駅で降りたものだから、不運にも道に迷うことになった。時間はどんどん過ぎていくし、なりふり構っていられなくなり、途中２度も警察官に道を尋ねた。ただ、英語では詳しく答えられないのだろう、大雑把な回答しか得られないので結局あまり決め手にならない。最後は自分の記憶に残っていた周辺の地図から、偶然心当たりのある場所を見つけてゴールを導き出した。最後の５００ｍは走ることになったが、何とか閉館までに間に合った。ちょっとしたハプニングだ。
息を切らせながらの観覧となったため、心から味わうという余裕はほとんどなかった。しかし、夢にまで見た映画ローマの休日の最後シーンで記者会見場として使われた場所に立つことができて感激だった。団体の予約以外は土曜日の午前にしか入館できないため、わざわざこのスケジュールを組んだのだ。
ただ、いまひとつピンと来ないというのが率直なところだった。おそらく、その原因は色だと思う。ローマの休日は１９５３年に公開された古い映画で、モノクロなのだ。当然記者会見場に色はない。しかし、実際のコロンナ宮はじつにカラフルできれいなのだ。そのギャップが印象の違いを生んだのだと思う。
トレビの泉：この日は土曜日だったが、この後もどこへ行ってもローマは混んでいた。
写真左/スペイン広場：見よ、この人の多さを。写真右/階段の上からの光景：アン王女の気分で駆け下りたいが、ほとんどベンチのように人で埋め尽くされている。
コロンナ宮をあとにして、次はトレビの泉に向かった。その後向かったスペイン広場とともに、ローマを代表する名所ではないだろうか。実際、両者とも、周囲を埋め尽くすほどの人が集まっていた。
スペイン広場から日本にメールを送って、一旦ホテルにチェックインすることにした。今度は地下鉄のＡ線に乗る。ホテルのチェックイン時刻を調べておかなかったため、実際には１４時から可能だったのだが、１６時からであることも想定してテルミニ駅で少し時間をつぶした。
苦労して預けた荷物を引き取り、徒歩でホテルへ。ベネチアのホテルと同じように、ローマでも駅から比較的近く、好都合だった。
ローマのホテルは申し分なかった。成田のリッチモンド同様ツインルームで、高級感のある内装だった。ベネチアでは棺桶のように小さなベッドのシングルルームだったから、一人部屋の追加料金がもったいないと感じたほどだった。しかし、このホテルの掲示によれば、この部屋は１９０ユーロらしい。円高が進んでいるので、現在の為替相場では２万円くらいとなるが、少し前なら２万５千円以上だ。浴室も広く、ひとりで使うには十分過ぎると思った。
今日はこれで納得と思い、夕食後明日のプランを練って寝た。
ホテルセレナの階段：三ツ星のホテルだが、階段は大理石だった。
写真左/ホテルの客室：ベネチアのホテルとは違って広く豪華だった。写真右/ホテルのエレベーター：古風な手動ドアだった。
平成２３年９月２５日
明日はバチカン美術館の予約をしてあるので、今日がローマ観光の中心日となる。徐々にからだが慣れてきたのか、体調は悪くなかった。朝食後出陣する。
今日のメニューは、カラカラ浴場、コロッセオ、フォロ・ロマーノだ。まずは地下鉄Ｂ線でチルコ・マッシモ駅へ。そこから歩いて６～７分のところにカラカラ浴場がある。朝早いせいか、それとも不人気だからか、他の観光スポットと違ってここは空いていた。
人がいないため、入口がそれと分からない。ガイドブックを何度も確認し、地図に書かれている場所へ行っても入口は見つからない。カラカラ浴場の一番外れまで行って、ようやく入口の案内を見つけることができた。結局来た道を戻ることに。要するに、ガイドブックが間違っているのだ。それらしい場所には気づいていたのだが、人がいないし、ガイドブックの表示と一致しない。ヴェローナカードのことも間違っていたし、ベネチア空港からのバス料金にも納得していない。このカラカラ浴場の入口の誤記で完全に持参したガイドブックへの信用を失った。（帰国後、すべて出版社に訂正依頼をした）
カラカラ浴場とガイドブックは何の関係もないのだが、この後さらに不愉快なことが起こった。入口でチケットを買おうとして一人だと告げたのに、まるで私がそこにいないかのように無視するのだ。もう一度「大人ひとり」と言ってもとぼけたままなので、カチンときて「無料なのか？」と言ってやった。すると、その様子を見ていた次の観光者が、私に歩調を合わせて「無料なの？どうなのよ！」とまくし立ててくれたのだ。結局無料だったのだが、一体どういうつもりだったのだろうか。東洋人だからバカにしているのだろうか。私の前の外国人には英語で話していたくせに。
ガイドブックでは、このカラカラ浴場はコロッセオなどと共通で６ユーロとなっている。一体どういうことなのかと思っていたが、この日は文化遺産の日ということで国立の施設はすべて無料だったことが後で分かった。カラカラ浴場は個人的には興味があったのだが、一部のモザイク画が残っているだけで、基本的には廃墟と化している。これが不人気の理由かもしれない。ただ、ローマ時代にこれほどの規模の娯楽施設があったことは、日本の事情を考えると想像をはるかに超えており、どれほど古代ローマが栄えていたかを物語っていると思う。
写真上段左/ホテルセレナの朝食：このホテルもコンチネンタルブレックファストだったが、品揃えは充実しており、毎日満足した。
写真上段右/カラカラ浴場：朝早い時間だったからか、不人気だからか、ここだけは人ごみがなく、ゆったりと見学できた。
写真中段左/中庭：上流階級向けとはいえ、ローマ時代にすでにこのような社交場が設けられていたとは・・・。
写真中段右/モザイク画：芸術的価値、歴史的価値は高いと思われるが、無残にも落下、破壊されてただ並べてあるだけだった。
写真下段左/カラカラ浴場の一室①：どのような部屋だったのか分からないが、実に広々としている。
写真下段中/カラカラ浴場の一室②：通路を見る限り、５階建てだったようだ。
写真下段右/床の様子：タイルではなく、色の違う石をきれいに並べて敷き詰めたようだ。
